特別講演会    自然環境と幼児期の大脳発達
開催日:
平成17年9月23日(金)
会 場:
千葉県立中央博物館 講堂
主 催:
千葉県自然観察指導員協議会
後 援:
NACS-J
協 力:
千葉県立中央博物館
講 師:
千葉県立中央博物館副館長
NACS-J理事  中村俊彦氏
参加者:
指導員41名  一般38名(内小ども6名) 
合計78名
担当指導員:
石嶋基次
(報告 服部マリ子)
 講演会当日が、3連休1日目ということで、 参加者の出足が心配されましたが、遠方からの会員および一般の方の参加もあって、まずまずの出席数でした。
 今回の講演会は、私たちが日ごろの活動などで感じていた、今の子供、若者への、疑問、不安が、数々の科学的なデータによって裏付けされているという内容でした。
 最近の目覚しい脳科学の研究発展の成果のおかげで、人の「心の問題」は「大脳の問題」として説明でき、人の大脳と自然環境、生活環境とのかかわりも明らかになってきたのです。 講師 中村俊彦先生の巧みな話術と、大型スクリーンに写し出される豊富なデータによって、人の大脳の構造と生理が、次々と解き明かされていきました。
 人が人たるゆえんを司る大脳新皮質の前頭葉に必要なのは、外界のしっかりした情報であり、その情報をしっかりと前頭葉に導く総合力が感性であること。その感性は、大脳生理的に重要な「臨界期」と呼ばれる、3~4歳または0~10歳ごろの大脳への刺激により形ずけられてしまうこと。人間の大脳は、自然とのかかわり、人間相互のかかわりの中で発達し形質獲得してきたものであるため、人間から自然を切り離す文明社会は、自然とのかかわりを、また近年の急激なコンピューター化は、人間相互のかかわりをも希薄にしている。人間の発達は、五感を刺激する豊かな体験なくしては、人間としての成長がありえないばかりか、大脳の退化現象にもつながる。特に幼児期の体験は重要である。          
休憩後、中村先生への質疑、応答がありました。
高校授業現場での体験談、母乳推進活動をしている方からの乳幼児の実態、自然観察への学校側の対応、父兄の無理解、などなど・・制限時間内では討論しつくせない問題が、山積でした。折しも当日の大手新聞、数社の朝刊トップに、荒れる小学校、キレる小学生の記事が掲載されていました。社会現象として報道されているこれらのことが、中村先生のいわれる「大人の作った便利で豊かな現代社会が、子どもにとっては貧しく危険なストレス社会になっている。」のであれば、至急、私たち大人がなすべきことの答えを出さねばなりません。今回の講演会は、自然観察の力が、子ども達の成長に大きなウエイトを持っていることを知ってもらう良い機会に、との意図から一般にも呼びかけました。もっと多くの、乳幼児をもつ若いママ、パパの参加がほしかったと思いましたが、受け入れ準備など課題は多いことでしょう。今後、従来の観察会と併行して、このような機会が持てたらと思いました。